声に出さないメリットもある あなたのためのアイデア発想40
こんにちは。ホンブチョウです。この連載コラムでは私が今まで学んできたアイデア発想のやり方を毎回ひとつづつ紹介していくことで、あなたに合ったやり方を見つけてもらいたいと考えています。
第四十回は、
ブレインライティング発想法
何かの会議で、気づけば毎回同じ人だけが発言してしまう──よくある感じですが、アイデア発想視点で言えば、場の空気や声の大きさに左右されて、アイデアの幅が狭くなるのは良くありません。「ブレインライティング」とは、喋るのが苦手な人でも、大丈夫な「書くタイプのブレスト」とでも言えばイメージしやすいかも知れません。
ブレインライティングは、アイデアを口頭ではなく「書いて」出し合う発想法のことです。参加者がまず自分のペースでアイデアを書き出し、次に他者の書いた案を受け取りながら、そこに発展や改変を加えていきます。ブレインストーミングのように発言しながらディスカッションする必要がなく、一人ひとりが静かに書くことに集中します。この“静けさ”と“組合せ”が、アイデアの質を大きく変えます。
最大のメリットは、心理的安全性が自然と担保される点です。
声に出してアイデアを伝えるのは、想像以上にハードルが高いものです。批判を恐れたり、突飛すぎるのではと、ためらったりして、発言を控えてしまう人は少なくありません。しかし書く形式なら、他者の視線を気にせず、個々の創造性を発揮しやすくなります。階層のある組織でも、紙に書かれたアイデアはすべてフラットに扱われ、発言力の強弱がアイデア価値に影響しません。
もう一つの大きな魅力は、“連鎖反応”が生まれやすいことです。ブレインストーミングでは場の流れにつられて方向性が流されがちですが、ブレインライティングでは全員の発想が同時並行で走るため、多様な出発点が生まれます。誰かが書いた思いがけない案をヒントに、「ではこれを逆転させたらどうか」「別の業界のセオリーを混ぜてみたら?」といった飛躍が自然に起こります。静かな机の上で、アイデアが静かに増殖していくようなイメージです。
では、やってみましょう。
大きな流れは、
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添付のようなシートを準備する
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6人のグループに分かれ、座る
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テーマの確認
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シート上部に全員テーマを書く
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各自アイデアを書く(5分で3つ)
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左隣の人に回す
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繰り返す(6行目まで)というものです。
大事なのが、テーマを明確に定義することです。
まず、「何について発想するのか」を一言で示すテーマを設定します。
例えば
・「会社においてエコな活動を増やすにはどうしたらいいか」
・「若年層に響く新商品の使い方提案」など、
テーマが曖昧だと収拾がつかなくなるため、大切なポイントです。
次のポイントは、“個人で”アイデアを書き出すところ(5分×3案)
各メンバーが、自分のシートに5分間で3つのアイデアを書き込みます。
大切なのは、評価しないこととスピードを優先すること。「荒くていい」「突飛でいい」と割り切って、とにかく量を出すフェーズです。
そしてシートを隣に回し、“発展・改良”のサイクルを繰り返すところ
5分経ったらシートを隣の人へ渡し、次はそのアイデアに自分の視点で下の行に追加アイデアを加えていきます。上の行に書かれているアイデアを展開したものでも良いですし、新しいアイデアでも構いません。ただし同じものは禁止です。
発展のさせ方は自由です。
・要素を足す・逆転させる・別ジャンルや技術を掛け合わせる・極端に振り切る・あえて削るなど。
このサイクルを6回繰り返すと、自然と18案のアイデアが集まります。
ここまでが「発散フェーズ」。質より量に徹するのが成功の鍵です。後半は苦しくなりますがなんとか埋めて下さい。
もちろん、ブレインライティングにもつまずきやすい点があります。テーマが曖昧なまま始めると発散しすぎてしまったり、制限時間を設けないと全体のペースが乱れたりします。時間は3分でも5分でも自由に決めて大丈夫ですが、
必ずシートが埋まった後で「評価・深掘りの時間」を別で設けることが重要です。
ブレストのように一人ずつ発言する方式では、どうしても時間がかかりますが、ブレインライティングでは全員が同時に書くため、短時間で大量の案が生まれます。
会議で意見が出ない、発言する人が偏っている、尖った案が出にくい──そんなチームでも、ブレインライティングを導入すると一気にアイデアが動き始めます。
静かな会議室で、ペンが走る音だけが聞こえる。やがてテーブルの上には、普段聞かれないタイプのユニークな案がずらりと並ぶ。ブレインライティングは、派手ではありませんが、企画会議などの空気をがらりと変える力を持ちます。発言力や上下関係といった“ノイズ”から解放され、純粋にアイデアの可能性と向き合える発想法です。
また生成AIを使えば「ひとりブレインライティング」も可能です。同じテーマで「人間6人版」と「1人+AI版」で出てきたものを比較してみるのも面白いですね。
人にとって書くことは、思考を自由にします。そして自由な思考こそが、新しい企画を生み出す最大の源泉だと思います。
ではまた次回。今回はここまで。
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