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佐藤雅彦さんは「音」から考えた あなたのためのアイデア発想36

2025.08.15

佐藤雅彦さんは「音」から考えた あなたのためのアイデア発想36

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こんにちは。ホンブチョウです。この連載コラムでは私が今まで学んできたアイデア発想のやり方を毎回ひとつづつ紹介していくことで、あなたに合ったやり方を見つけてもらいたいと考えています。

 

第三十六回は、

勝手にルール発想法

先日、横浜美術館にてリニューアルオープン記念で行われている、佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)に行ってきました。

私にとっては、見る者すべて懐かしい感じで、「スコーンスコーンコイケヤスコーン」も、小沢健二さんの「カローラIIにのぉ〜て〜」も、萩原健一さんの「モルツモルツモルツモルツ うまいんだな、これが。」も、キョンキョンの「ジャンジャカジャーン。」も、「IQ」も、「だんご3兄弟」「ピタゴラスイッチ」もそうですが、その作り方と分かり方を本人解説で見ることができる濃ゆい展示会でした。思わず3時間くらい経っていました。

その中で、彼が一番初めに着目したのが「音から作る」というルールでした。

人を振り返らせるのは、音であり映像ではないという前提のもと当時新しいコマーシャルの作り方として「音から作る」を大前提のルールとして作っていたそうです。音が先で、映像は後付けという意味ですね。

その説明を聞いていて思い出したのが、勝手にルールをつくって考えていく「勝手にルール発想法」です。ふつうは自由に発想することが大事なのですが、あえて自分が作ったルールを課すことで、逆に幅を広げるやり方です。

 

では、やってみましょう。

1. 自分で強制ルールをひとつ設定する

例えば、「時間ルール」:30秒以内でできないといけない。とか、

「数字ルール」:3つの色しか使ってはいけない。

「素材ルール」:紙だけでつくらないといけない。などです。

2. 考えるテーマを決める

新しいお菓子「クッキー」を考える。「コーヒー」で、「調理器具」でなどです。

もしくはテーマを決めずに、「ルール」をもとになんでもいいので考えていくことも発想の広がりという点ではとても面白いです。
3. ルールに従って発想する

制約の中で成立するアイデアを考えます。ルールが新しい工夫や意外性を引き出すことになります。

例えば、「時間」をルールに考えてみましょう。

時間ひとつとっても、「使用時間」や「消費時間」、「作る時間」や「制限時間」など、色々なルールを設定することが可能です。

● 使用時間ルール:「使うのは30秒以内」

  • 1分で完了する深浸透フェイスパック(朝の支度時間短縮用)
  • 30秒インスタントラーメン

● 消費時間ルール:「食べてから10分以内に変化が起こる」

  • 食後10分で舌の色が変わるキャンディ(パーティーゲーム用)
  • 食べて10分後に香りが広がるデザート

● 製造時間ルール:「作るのは1分以内」

  • 1分で組み立てられるテント
  • 1分で温かくなる急温飲料

● 時間経過ルール:「30日後に完成する」

  • 購入後30日で自動的に咲く花がセットされたインテリア
  • 30日ごとに色が変わるボールペン(使用頻度によって変化)

● 制限時間ルール:「30秒以内に選ばなければならない」

  • 購入画面で30秒以内に決めないと価格が変わるECサイト
  • メニューを30秒以内に選ぶと追加トッピング無料の飲食店

● 長時間完成待ちルール:「手に入れてから〇日後に完成する」

  • 30日間熟成させてから食べるチーズキット
  • 開封後1週間で飲み頃になる自家発酵ドリンク

● 成長時間観察ルール:「時間の経過とともに育つ・変わる」

  • 子供の成長に合わせてサイズが変わる服
  • 使い込むことで色が変わるスマホケース

時間だけでもいろいろ考えられますね。では佐藤さんが考えた「音」発想で考えてみるとどうでしょう?

● 「音」そのものを商品価値にするルール

  • パンをかじった時の「サクッ」という音が売りのパン
  • 鉛筆を削る音が心地よい「鉛筆削り」

● 「音」で状態を伝えるルール

  • 洗濯完了音が季節や気分で変わる洗濯機
  • ペットがご飯を食べ終わると「ごちそうさま音」が鳴る食器

● 「音」をカスタマイズできるルール

  • 車のウインカー音を、季節ごとや気分で切り替え可能
  • キーボードを打つ音を「タイプライター音」「ドレミファ」などに変更できるガジェット

● 「音」が副次効果を持つルール

  • 野菜を切る音が一定のリズムになる包丁
  • 昼寝に適した周波数の音が鳴る昼寝専用枕

 

案外人は制約があるほうが、創造性を発揮しやすいのかもしれませんね。

即興で作った制約が、思考を一気に別ルートへ導いてくれるような感じです。

ちなみに美術館の展示では「音から作る」の先にもいろいろな手法が編み出され展示されているのですが、それはご自分の目で確かめてきてください。

 

横浜美術館の佐藤雅彦展は2025年11月3日まで。今のところ全国巡回は予定されていないようです。万博と同じで、まだまだやっていると油断しないで、いつまでに行くとルールを決めてぜひ行ってみてください。子供と一緒に行くのもオススメですがじっくり見たいならおひとりで。

またその先のゾーンで、ロバートキャパの写真や、ポール・セザンヌ、サルバドール・ダリ、奈良美智さんなどの作品も、なにげに並んでいてびっくりしました。同じチケットで見ることができますよ。

 

ではまた次回。今回はここまで。

 

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