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ディック・ブルーナさんのシンプルの正体って? あなたのためのアイデア発想50

2026.10.15

ディック・ブルーナさんのシンプルの正体って? あなたのためのアイデア発想50

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こんにちは。ホンブチョウです。この連載コラムでは私が今まで学んできたアイデア発想のやり方を毎回ひとつづつ紹介していくことで、あなたに合ったやり方を見つけてもらいたいと考えています。

 

第五十回は、

引いて、引いて、ひとつ足す発想法

ついにこの連載も第50回を迎えました!

いつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。節目の今回は、私の好きなデザイナーのお話から。

 

私の好きなデザイナーにディック・ブルーナさんがいます。以前、といっても10年ほど前。彼が亡くなった後に行われた巡回展「シンプルの正体」の中で、彼がデザイナーとして働きはじめる前のスケッチを見ました。その頃から彼の絵はシンプルそのものでしたが、やはりうさこちゃんの絵本にも通じる温かみやユーモアのようなものを感じさせる絵でした。

ブルーナさんの絵を見ると、簡単にささっと描いているように見えるかもしれません。しかし彼のシンプルさへのこだわりは相当なものです。絵本づくりでも、正方形の見開きの左に文。右は挿絵。使う色は原則6色まで。文は4行。という自分のスタイルを守り続けていました。彼の「シンプル」には潔さとそれを生み出す中での、大変な工程が含まれています。

別の機会にブルーナさんの制作工程を知りました。
まず「1、トレーシングペーパーに下絵を描く」ことから始まります。

いわゆる「下描き」です。「変わったやりかた?そうかもしれませんね。納得がゆくまで、それこそ同じものを100回スケッチすることだってあります」と語られていたようです。

普通の紙ではなくて、半透明のトレーシングペーパーで、これ以上削りようがないところまで余分なものを削ぎ落として理想のかたちを得る作業です。
次に「2、下絵をなぞって紙に写す」
そして「3、写した跡を黒くなぞる」

そのなぞり方も独特で丁寧なしごとです。黒のポスターカラーで、その跡に沿ってゆっくりゆっくり描いてゆきます。一気にではなく、少しずつ時間をかけて、点をつなぐように線を描いていたそうです。

最後に「4、4色を決める」

ブルーナさんは色にもシンプルさを求めます。原画ができあがったらそれを透明フィルムに焼きつけて、どんな色をくみあわせるか検討します。この世界には無限の色が存在しますが、最初は赤・黄・青・緑だけでした。その後、茶色とグレーを追加しました。子犬や子熊、うさぎや象を描くために。

いかがでしょう?シンプルさの裏側には、このような丁寧で大変なしごとがあってこそ生み出されているんです。

さて、今回の発想法はそんなブルーナさんの引き算と足し算を元に考えた発想法です。

名付けるとすれば「引いて、引いて、ひとつ足す発想法」。

アイデアを考えるとき、私たちはついつい何かを足そうとしてしまいます。もっと便利に、もっと面白く、もっと目立つように。そうしていろいろな要素を足しているうちに、結局何が言いたいのかわからなくなってしまうことがよくあります。

 

なので今回は、いつもとは逆の順番で考えてみましょう。まずは「引き算」です。

例えば「本屋さん」

本屋には、たくさんの本が並んでいます。まず、ジャンル別の棚を引いてみる。次に、表紙を引いてみる。さらに、書名も引いてみる。最後には、本そのものも引いてしまう。本のない本屋なんてと思うかも知れません。

でも、本屋さんの魅力は、本を買うことだけではありません。

「まだ知らない本や世界、考えに出会える偶然」も大切な魅力です。

なので、ひとつだけ「偶然」を足してみます。

店内には本の代わりに、いろいろな「問い」が置かれています。

「最後に泣いたのはいつですか?」

「もう一度会いたい人は誰ですか?」

「10年前の自分に何を伝えますか?」

気になった問いを選ぶと、その答えを探すヒントになる一冊が、奥の書庫から届けられます。

引いたもの:棚、表紙、書名、陳列された本
残した本質:知らない世界との出会い
足したもの:偶然の問い
生まれたアイデア:問いから本と出会う本屋
本を探しに行く場所から、思いがけない本に出会う場所へ。

大切なのは、たくさん足すことではなく、

本当に大切なものだけを残し、そこに何を足すか。その組み合わせを考えることです。

ブルーナさんが何度も何度もスケッチを繰り返し、余分な線を削ぎ落としていったように、アイデアも引き算を繰り返すことで、その本質が見えてくることもあるのだと思います。

そして、最後のひとつの足し算が、今までにない魅力を生み出すのだと考えてみる。何かアイデアに行き詰まったときには、足すことをやめて、まずは引いてみてください。

意外なものを引いたところに、新しいアイデアの入り口が見つかるかもしれません。

筒井康隆さんの「残像に口紅を」も、日本語の音がひとつまたひとつと消えていく。そんな実験的な作品でしたね。面白かった覚えがあります。

 

考えればお鮨などのシンプルなお料理も、同じように丁寧で大変な下しごとがあってこそですよね。生成AIで簡単に「生み出した気持ち」になれてしまう今だからこそ、裏側のしごとこそ大事にして見直したいですね。

ではまた次回。今回はここまで。

 

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