ダラダラを脳科学が証明してくれる? あなたのためのアイデア発想48
第四十八回は、
ダラダラが最強のアイデアを生む理由
今回で48回目の連載になりますが、初めて更新日時をすっ飛ばしてしまいました!すいません。
いろんなタスクをこなそうとバタバタバタバタしていると余裕がなくていけませんね。
なので今回はダラダラするのも大事だよというお話です。
「どうしても頭がボーッとする」「集中力が途切れて、PCの前でフリーズしてしまう」みたいな時がありませんか?
でも「シャキッとして頑張らなければ」と自分を責める必要はまったくありません。実は脳科学の観点から見ると、その「集中力が切れてぼんやりしている状態」こそが、これまでにない新しいひらめきを生み出す絶好のチャンスなんです。
脳の神経科学において近年注目されている「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という言葉をご存知ですか?ここに「だらけ」を最強のアイデア発想力に変えるアプローチが隠されています。
1. 脳のエネルギーの80%を使う謎の巨大回路「DMN」
私たちが何かに集中して作業しているとき、脳は「セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク(CEN)」という論理的思考回路を使っています。書類を作成したり、計算をしたり、会議で発言をまとめたりする「集中モード」です。
一方で、ボーッとしているときや、ソファで横になって特に何も考えていないときに、脳の活動が停止しているかというと、全く逆です。
2000年代初頭、脳神経科学者マルクス・ライクル教授らの研究によって、人間が「安静状態(何もしていない状態)」にあるときにだけ、脳の広範囲な領域が同期して激しく活動し始めることが判明しました。これが「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」です。
驚くことに、脳が消費する全エネルギーのうち、特定作業(CEN)に使われるのはわずか約5%程度。残りの約60〜80%は、この「何もしていない状態(DMN)」の維持に費やされていると言われています。
つまり、私たちの脳は「ボーッとしているとき」にこそ、裏で膨大なエネルギーを投入してフル回転しているのです。
2. なぜDMNは「誰も思いつかないアイデア」を連れてくるのか?
では、DMNが起動しているとき、脳内では一体何が起きているのでしょうか?
集中モード(CEN)のとき、脳は最短距離で答えを出そうとするため、既存の常識やロジックの枠組み(既知のパターン)の中でしか思考できません。これは「Googleで狙ったキーワードをピンポイント検索する」ような状態です。
これに対してDMNが起動すると、脳は「広範囲の記憶と情報の自動整理」を始めます。
過去の個人的な経験、昨日見たニュース、子供の頃の記憶、仕事で抱えている悩み――これらが意識の制約を離れて、脳内でランダムに衝突し合います。脳科学ではこれを「遠隔結合(Remote Association)」と呼ぶそうです。
CEN(集中): 互いに近い概念(文脈が同じもの)を繋ぐ
DMN(弛緩): 互いに遠く離れた概念(一見無関係なもの)を突然繋ぎ合わせる
古くから、革新的なアイデアが生まれる場所として「3つのB(Bath:お風呂、Bed:ベッド、Bus:移動中のバス)」が挙げられます。これらに共通するのは、どれも「意識的な作業を止め、ボーッとしている場所」だということです。
アルキメデスが湯船の中で浮力の法則を思いつき、ニュートンが木の下で休んでいるときに万有引力をひらめいたのは偶然ではありません。DMNという脳のバックグラウンド処理が、遠く離れた情報同士を結びつけた瞬間の産物なのです。
3. 「集中」と「弛緩」の振り子運動が企画を完成させる
ここで重要なのは、「DMNだけでも、CENだけでも企画は完成しない」という点です。
何も情報がインプットされていない状態(記憶の引き出しが空っぽの状態)でボーッとしても、DMNはシャッフルする材料がありません。また、DMNが素晴らしい「ひらめき(アイデアの種)」を届けてくれても、それを企画書や形にするには集中モード(CEN)のロジックが必要です。
アイデア発想とは、例えるなら「お料理」と言えるかも知れません。
- CEN(集中): 市場調査をし、悩み、資料を読み込んで「材料(インプット)」を集める。
- DMN(弛緩): 考えるのを完全にやめてボーッと過ごし、脳の鍋で「じっくり煮込む(熟成・結合)」。
- CEN(集中): 浮かんできたひらめきをすくい上げ、ロジックで固めて「料理(企画)」として完成させる。
忙しすぎて集中力が切れるのは、ステップ1(材料集め)に偏りすぎてオーバーヒートした脳が、「いいから早くステップ2(熟成)に入りなさい!」と出しているSOS信号なのかも知れません。
4. 【実践】DMNを正しく起動する「上質なサボり方」
ただし、一つだけ大きな注意点があります。
「ボーッとする時間」を作ろうとして、スマホでSNSや動画をダラダラ見てしまうと、DMNは起動しません。
画面からの強い光や新しい情報は、脳の視覚野や注意ネットワークを刺激し、脳を別の意味で疲弊させてしまうからです。
真の意味でDMNを活性化させ、脳に最高の発想をさせための「正しくボーッとする3ルール」を試してみてください。
【上質なボーッを作り出す3ルール】
- 「目を閉じる」か「一定の風景を眺める」
涼しい部屋で目を閉じて横になるか、窓の外の雲の動き、風に揺れる木の葉などをぼんやり眺める(視覚情報を制限する)。
- 「答えを出そう」としない
課題について考えるのはやめ、「涼しくなってきたなぁ」「おやつ食べたいなぁ」といったとりとめのない雑念が頭を通り過ぎるのをそのまま放置する。
- ひらめいたら「1秒でメモ」する
DMNがもたらすひらめきは、夢と同じで非常に消えやすい特徴があります。浮かんできたらすぐにスマホの音声入力やノートに「単語1つ」だけでも書き留めて、再び脱力モードに戻る。
「集中できない自分」「ダラダラしてしまう自分」に対して、罪悪感を持つ必要はありません。
そのダラダラしている時間、あなたの脳の裏側では、80%ものエネルギーを使って、誰も見たことのない未来の企画を密かに組み立ててくれています。
集中しているとき=アイデアの「材料」を集める時間
だらけているとき=脳が材料を「熟成」させている時間
この2つのサイクルを意識的に回してみる。
好きな飲み物でも飲みながら、肩の力を抜いて。秋の夜長に、脳のDMNに仕事を丸投げする贅沢な「熟成タイム」を楽しんでみませんか?
「ボーッとする」というのは、実は最高の脳のメンテナンスであり、知的生産の要だったりします。のんびり過ごす10分間の脱力は、決して無駄遣いではなく、次のヒット企画を生み出すための「必要な先行投資」なのかも知れませんね。
ではまた次回。今回はここまで。
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