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ストーリーで共感や感情移入は起こる あなたのためのアイデア発想46

2026.06.15

ストーリーで共感や感情移入は起こる あなたのためのアイデア発想46

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こんにちは。ホンブチョウです。この連載コラムでは私が今まで学んできたアイデア発想のやり方を毎回ひとつづつ紹介していくことで、あなたに合ったやり方を見つけてもらいたいと考えています。

 

第四十六回は、

ストーリー思考発想法

いよいよサッカーW杯が始まりました。私も以前、南アフリカや、ドイツ、ブラジルでも現地観戦しましたが、リアル体験での記憶とは別に、サッカーの試合には退屈な90分もあれば、何年たっても語られる90分もあります。その違いは、なんでしょう?技術の高さ?すごいゴール?

それだけではない、人の心を動かす試合には、たいてい「ストーリー」があります。

たとえば、2022年の日本対スペイン戦で生まれた「三笘の1ミリ」。ボールが完全にはラインを割っていなかった、その紙一重が日本の運命を変えました。三笘薫選手自身も「1ミリかかっていればいいなと思いました」と語っています。また、2018年のベルギー戦は、あと一歩で届きそうだった夢が、わずかな時間で反転したことから「ロストフの14秒」として記憶されています。

人は、簡単にかなうものにはあまり心を動かされません。逆に、絶望的すぎるものにも乗っかれない。心が動くのは、「難しい。でも、もしかしたら届くかもしれない」というギリギリの距離にあるのだと思います。アイデア発想でも同じです。人を惹きつける企画には、必ず“達成したいこと”と“それを阻むもの”が同時に存在しています。

 

 

感動を生むストーリーを、どう発想のヒントに変えればいいのか。私は次の4つの手順が有効だと思っています。

 

では、やってみましょう。

まず一つ目は、「主人公の願い」を一行で言い切ることです。

アイデアを考えるとき、多くの人は機能や特徴から入ります。しかし人が知りたいのは、結局「誰が、何をかなえたいのか」です。たとえば「忙しい親が、子どもとちゃんと向き合う時間を取り戻したい」「新人社員が、自信を持って初提案を通したい」といった感じです。願いが明確になると、アイデアに体温が宿るというか、ストーリーの大まかな方向性が決まります。。

 

二つ目は、「それを阻む壁」を置くことです。

ストーリーは、願いだけでは動きません。障害があるから見たくなる。時間がない、予算がない、経験がない、周囲に理解されない。こうした壁があるほど、アイデアは輪郭を持ちます。発想の場面では、「なぜそれが実現しないのか」をあえて3つ書き出してみましょう。すると、単なる思いつきが、ドラマを持った企画に変わってきます。はたして主人公はその障害を乗り越えられるのか?乞うご期待と言ったところでしょうか。

 

三つ目は、「あと少しで届きそうな瞬間」を設計することです。

三笘の1ミリが象徴しているのは、まさにこの“紙一重”です。全部ムリではなく、もう少しで届く。その緊張感が、人を前のめりにします。商品企画アイデアなら、「完全な習慣化」ではなく「まず3日だけ続く仕組み」を考える。

教育サービスなら、「英語が話せるようになる」ではなく「次の会議で一言だけ自信を持って言える」にする。ゴールを“少し手前”に置くと、リアリティが生まれます。奇跡が起きて叶うようなストーリーもありますが、それではアイデアの達成も奇跡待ちになってしまい、現実的なアイデアになりません。

 

四つ目は、「結果」ではなく「変化」を描くことです。

人が感動するのは、成功そのものより、そこに至る内面の変化です。勝ったか負けたかだけではなく、挑む前と後で、その人がどう変わったのか。アイデアでも同じで、「便利です」「売れます」ではちょっと弱い。「この体験によって、その人の見え方がどう変わるのか?行動が目に見えて変わる。」まで描けると強くなります。

 

アイデアは「機能ではなく変化を考える」のだ、と考えると発想の質が一段上がります。

また、頭の中だけで考えにくい場合は「ストーリーボード」を作成しながら考えるのも良いと思います。

以前紹介した、「コアクエスチョンストーリー発想法」も参考にしてみてください。

 

では、具体例を考えてみましょう。

たとえば、「街の書店を活性化するアイデア」を考える。

ありがちな案は「イベントを増やす」「SNSを頑張る」で終わります。でもストーリーの型で考えれば違ってきます。

主人公は「忙しくて本を読めなくなった大人」。願いは「もう一度、本と出会う感覚を取り戻したい」。障壁は「時間がない」「何を選べばいいかわからない」「スマホに負ける」。そこで企画を、

「3分で“今日の1冊”に出会える棚」として設計する。さらに、その棚に選書した理由を店主の短い言葉で添える。

するとこれは、単なる陳列の改善ではなく、

“本を読む自分を取り戻す”ストーリーになりませんか。

 

あるいは新商品の発想でも同じです。たとえば健康アプリを考えるなら、

「運動記録アプリ」では弱いし、たくさんある。主人公を「健康診断の結果が気になり始めた40代」に置き、願いを「まだ遅くないと思いたい」にする。障壁は「ジムは続かない」「時間がない」「頑張る自分を演出するのは疲れる」。そこで、“努力の記録”ではなく

“昨日より3分だけ体を動かした証拠”が残る設計にする。ウルトラマンのカラータイマーのように「その3分間だけは集中して戦えるような演出」もアリかもしれません。

人は、完璧な未来より、少し前に進めた実感に励まされるからです。

 

アイデアに行き詰まったときは、「これで何ができるか」と考えるより、

「誰の、どんな切実さを、どんな壁の向こうでかなえるのか」と問うてみることです。

心を動かすアイデアには、たいてい主人公がいて、障害があって、紙一重の希望があり、最後に小さくても確かな変化があります。

 

ドラマティックなサッカーの試合とは、単に点がたくさん入る試合ではありません。前回大会のアルゼンチンの決勝のように、かなわないかもしれない願いに、人が祈りを乗せられる試合です。

アイデアもまた同じです。人が応援したくなるアイデアをつくること。そこから先に、共感も、拡散も、記憶に残る強さも生まれてくるのだと思います。

 

ではまた次回。今回はここまで。

 

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