体験施策がいっぱい!赤ちゃん用品売り場にみるリアルならではの商品訴求
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ネット通販とリアル店舗での買い物のすみ分けが進むにつれて、リアル店舗の価値である「商品に触れられること」「商品体験ができること」が益々重要視されています。多くの売り場でリアル店舗ならではの商品訴求が行われ、買い物客にどのような体験をしてもらえば良いのかが日々考えられています。
そんなリアル店舗ならではの体験施策ですが、赤ちゃん用品売り場へ行くと参考となる様々な事例を見ることができます。これは、自分では商品を選べない赤ちゃんの代わりに、保護者がしっかりと商品を吟味するために行われているのですが、我が子のために最適な商品を選びたい保護者のニーズへしっかり応えるための工夫も随所に見られます。今回は、そんな赤ちゃん用品売り場の体験施策をレポートします。
早速、赤ちゃんの等身大人形がお出迎え
売り場へ行くと、まず目に入るのが赤ちゃんの等身大の人形です(写真①)。
この人形は、大きさだけでなく重さも忠実に再現されており、赤ちゃんの抱き心地などを実感できます。初めての子育ての保護者にとっては、抱くことからシミュレーションできる施策です。また、手足の可動もリアルなため、ベビーベッドやベビーカー、抱っこ紐、チャイルドシートなどの商品を試す際に、この人形で実際の使用感を確認できます。赤ちゃん用品売り場には必須の人形となっています。
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(写真①:多くの若い夫婦が訪れる店頭。赤ちゃんの扱い方を体験できる人形が置かれている)
赤ちゃんの重さを体験できる重り袋
10年ほど前からでしょうか。ベビーカー売り場に赤ちゃんのかわいいイラストが描かれた重り袋が置かれるようになりました(写真②)。
展示しているベビーカーへこの重り袋を乗せることで、赤ちゃんを乗せた時の使用感や操作性をリアルに体験できるようにするためのものです。
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(写真②:赤ちゃんの重さを実感できる重り袋)
売り場には、アスファルトや砂利道、でこぼこ道などを体験できる床も作られているので、悪路での操作性も確認できます(写真③)。
重り袋を乗せたり降ろしたりすることで、赤ちゃんを乗せやすいデザインや構造なのかも確認でき、商品を選ぶ上で大変便利に使われています。
この施策は、すぐに各メーカーがそれぞれの重り袋を用意しました。それだけ売り場で重宝された施策だったのだと思います。
今では、スタイリッシュな重り袋など、商品のデザイン性に合わせた重り袋も登場しています。
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(写真③:悪路でのベビーカーの押し心地を体験できる床面)
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重要なシチュエーションを教えてくれる体験設備
ある店舗では、少し大がかりな体験設備も作られていました(写真④)。
これもベビーカー売り場に作られていたのですが、見て分かるように本物そっくりの原寸大の改札口です。
これは、駅の改札口でのベビーカーの取り回しを確認するための設備になります。
最近は両親が共働きのため、通勤途中に赤ちゃんを保育施設へ預けることが増えています。しかし、通勤ラッシュの中でベビーカーを使って赤ちゃんと移動するのは至難の技。多くの通勤客が行き来をする改札などは、スムーズに通過できるかどうかが身の安全にも関わります。そんなシチュエーションを売り場で確認できるのがこの設備となります。
この施策の秀逸な点は、買い物客へ通勤ラッシュ時のベビーカーの取り回しの重要性を気づかせてくれることです。ベビーカーを選びに来た買い物客には、ここまで具体的な使い方に気付かないことが多いかと思います。しかし、いざベビーカーで改札口を通ろうとしてみると、商品によって操作性が違うことに気づきます。ベビーカーを使いながらICカードをタッチする動きも確認でき、自分の体力に合ったベビーカーかどうかも知ることができます。
この店舗は都心部にあるため、来店客はベビーカーを使用しながら公共の交通機関を利用する機会も多いでしょう。
このように、来店客に合った商品体験を提供することも、リアル店舗に必要な考え方かと思います。
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(写真④:電車の改札口を忠実に再現した体験設備)
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商品の使い方も学べる体験設備
また、赤ちゃん用品売り場では、初めて使う商品を求めてくる人も少なくありません。
中には使い方がよく分からないまま購入してしまい、買った後で苦労をする人もいそうです。そんな買い物客のために、使い方指南も行える設備が用意されていました。それは、チャイルドシートを取り付けるための自動車の車内を再現した設備です(写真⑤)。
原寸大の自動車入口が描かれたパネルの裏側に、実際の自動車の座席が置かれていました。
シートベルトも取り付けられており、この設備を使ってチャイルドシート選びや、取り付け方を学ぶことができます。チャイルドシートは、初めて使用する人には扱い方が難しい商品です。まずは、この設備を使って色々な商品を取り付けながら、商品特徴などを確認することになります。購入する商品が決まった後も、改めて取り付け方を練習することで安心して持ち帰れます。店員さんの指導の下で商品の選び方から取り付け方までをしっかり確認することで、やっと安心した買い物ができそうです。
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(写真⑤:チャイルドシートの使い勝手を確認できる体験設備
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商品特徴を伝えるメーカーの体験施策
各商品メーカーも、最新の商品特徴をアピールした体験施策を用意しています(写真⑥)。
競合商品があふれる店内で自社商品の特徴をしっかりと伝えるために、保護者が納得しやすい実演型の説明を取り入れています。例えば、ベビーカーの車輪がいかにスムーズに回転するかを説明するために、同じ機構を用いたスピナーを取り付け、スピナーを回転させることで可動性を実感できるようなギミックを用意していました。また、複数のメーカーが赤ちゃんを守るクッション性能を説明するために、クッション素材へ重りを落としたり、手で押させたりして、安全性を実感できる仕掛けを企画していました。
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(写真⑥:ベビーカーやチャイルドシートのクッション性能などを説明した体験什器)
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赤ちゃんの代わりに、見て、触って確認
哺乳瓶の乳首部分を触れられるように展示している展示台もあります(写真⑦)。
哺乳瓶の乳首部分は赤ちゃんの発達などに合わせて変えていくことが望ましいのですが、どのような種類があるのか、実物を展示して比較検討ができるようにしています。
それぞれの乳首部分は、ミルクの出る穴の大きさや数、素材が異なっており、実際に触りながら確認することが可能です。また、乳首部分のサイズをアイコン化しており、陳列されている商品パッケージにも同じアイコンを掲載することで、スムーズに商品を手に取るところまで分かりやすく誘導してくれます。
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(写真⑦:成長によって変える哺乳瓶の乳首部分を触って確認)
幼児用のシューズコーナーでも、実際の商品に触れることで容易に商品選びが行える訴求が行われています(写真⑧)。
シューズ選びは、実際に履いてみてサイズを確認しなくてはなりませんが、幼児にはちょうど良いサイズかどうかのアピールができません。
そこで、保護者がサイズを確認できるようにつま先部分が透明素材になっている試着用シューズが置かれていました。
実際に幼児に履かせてみて、つま先のつまり具合を保護者が目で確認できるようになっているのです。この試着シューズで我が子の足のサイズの目安が分かるので、今後の靴選びにも役立ちます。この事例は数年前より実施されているロングラン施策なのですが、今でも多くの買い物客に使われています。
体験施策として売り場に必須なものなのでしょう。
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(写真⑧:乳幼児のつま先のつまり具合を直接見て確認)
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まとめとして
赤ちゃん用品は、使用者(赤ちゃん)と購入者(保護者)が異なる、代理購買商品です。物言えぬ赤ちゃんの代わりに、保護者がしっかりと商品を見極める必要があるため、これらの体験型施策が重要になります。逆に言えば、保護者が商品を見極められない売り場は買い物がしにくい売り場であり、買い物客の足も遠のいてしまうでしょう。
赤ちゃん用品に限らず、代理購買だからこそ商品体験が重要な売り場は他にもあるかと思います。その時、赤ちゃん売り場で行われているような体験型施策は、企画の切り口や、制作物のギミックなどに参考となる事例も多いのではないでしょうか。
今後もリアル店舗には続々と店頭施策の好事例が登場してくると思います。そんな事例の紹介が店頭プロモーションの企画のヒントに繋がれば幸いです。今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
文:POP研究家 向坂文宏(桜美林大学准教授)
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